私の家族信託
体験談

  1. 私の家族信託 体験談

家族信託のきっかけは、身近な人が認知症になったこと

「鹿児島のおばちゃんが、認知症で施設に入ることになった」
この知らせが、私にとって家族信託を考える大きなきっかけとなりました。

当時、私は家族信託コンサルタントとして、多くのご家族の認知症とお金の問題に関するご相談をお受けしていました。
認知症になって判断能力がなくなり、不動産が売却できず空き家になってしまったり、預金が1億円あっても口座が凍結されて引き出せず困っているなど、ご家族が直面する困難を目の当たりにしてきました。

「認知症とお金の問題は他人事ではない」と理解していましたが、身近な人が認知症になったことで自分にも問題が忍び寄っていることを感じ、一気に自分事として捉えるようになりました。
その時、父は心臓を患い、体力も低下して、大好きなゴルフをやめてしまいました。
運動不足は認知症のリスクを高める可能性があります。

「父が認知症になってしまったら…」
そう考えると、いてもたってもいられなくなりました。
「いざという時に介護はできるのか…」
「介護費用を立て替えられるのか…」
不安は募るばかりです。

家族会議は、普段話せないことを話せる貴重な機会

家族信託をしたときの家族構成

2016年5月現在

実家(千葉県)
父:75歳
母:72歳
財産:預金・不動産(自宅)

私の家族
(東京都)
横手彰太:44歳
配偶者 あり
子ども 1人

姉の家族
(香川県)
姉:45歳
配偶者 あり
子ども なし

親に聞けない「お金の話」

父は、高度経済成長期を支えてきた世代です。
週末はゴルフや仕事関係の付き合いなどで家を空けることが多かったのですが、たとえ短い時間でも、家族との時間を大切にする人でした。
母は60代からパートで働いていましたが、それまでは専業主婦。
決して裕福ではありませんでしたが、ごく普通の幸せな家庭でした。

両親は、父の退職金と年金で生活しています。
父の財産は、自宅の不動産と、父が高校卒業から定年まで勤め上げて貯めた預金です。

しかし、親の財産がいくらあるのか知らず、いくら年金をもらっているのかと聞くこともできませんでした。
家族信託のコンサルタントの立場でありながら、自分の親にお金の話を聞くのは難しいものだと感じておりました

口座が凍結されたら、誰が親の生活費を立て替える?!

認知症になって判断能力が低下すると、自宅を売却して施設の費用に充てることができなくなります。
口座が凍結されれば、年金も生活費として使えなくなるかもしれません。

姉は香川県に住んでおり、千葉県にいる両親に何かあってもすぐに駆けつけることはできません。
私は仕事も忙しく、小さな子どももいました。
親のために月10万円もの生活費を立て替えることなど、とてもできそうにありませんでした。

妻には心配をかけまいと、この悩みを打ち明けられずにいました。
二人目の子どもを考えていた時期でもあったため、親の認知症とお金の問題に妻と子どもを巻き込むわけにはいきません。

すぐに同意を得られ、家族信託をすることに

まずは父に、家族信託の話をしました。
父は、自分の兄弟姉妹6人のうち3人が認知症になったことで、「自分もいつかは…」と意識し始めていたようでした。
また、私がこの分野の専門家として働いていることも理解してくれていたので、家族信託の手続きにすんなり同意してくれました。

姉とは、香川県への出張のタイミングでじっくり話すことができました。
姉は介護の仕事をしていて、親のことを人一倍心配しています。
家族信託のこと、親の介護の問題、自分たちの問題・課題について伝えると、すぐに同意してくれました。

家族信託はチーム、家族で設計するスタイル

家族信託を検討するということは、家族会議を重ねるということです。
お互い生活があると、ゆっくり話す機会はなかなかありません。
家族会議は、普段話せないことを話せる貴重な機会です。

遺言とは違い、家族信託は一人で完結できるものではありません。
家族みんなで話し合い、設計していく必要があります。
そして、親と子、兄弟姉妹間でも連携をとっていかなければなりません。

家族会議の回数や期間は、家庭によって様々です。
私の場合はスムーズに、そして貴重な話ができたことは、とても大きかったです。

シンプルな設計、小さな努力で、大きな成果を

相続の落とし穴は
「父親が亡くなった時に、母親が認知症になっているケース」

両親が二人とも健在な場合、どちらが先に認知症になるかはわかりません。
発症の時期も期間も、全く予測できません。
相続も、どちらが先に発生するかわかりません。

多くの場合、主な財産は自宅と預貯金です。そして、その名義人は父親であることが多いです。
専業主婦歴が長かった私の母のように、一般的に母親は不動産はなく、預貯金も父親ほどありません。

そのため、財産を持っている父親にフォーカスしがちですが、ここに相続の落とし穴があります
それは、父親が亡くなった時に、母親が認知症になっているケースです。

横手が得意な「父親が残した財産を、母親が使えるようにする」
家族信託のシンプルな設計

通常の法定相続分は、配偶者 1/2、残りの1/2を子どもで均等に分けます。

しかし、父親の相続が発生した時に、母親が認知症で意思能力がなければ、遺産分割協議は成立しません
協議を成立させるためには、法定後見人の申し立てをする必要があります。
仮に父親が遺言で「母に全ての財産を承継する」と書いていた場合、承継はできても、承継したその瞬間に財産が凍結されます。

私が得意とする家族信託の設計は、たとえ、父親が亡くなる前に母親が認知症になってしまっても、父親が残した財産を母親が使えるようにできる(母親に承継して家族信託が継続する)仕組みを作ることです。

父親の時に自宅を売却しなかった場合でも、母親が介護施設に入るタイミングで売却することができます。

複雑な設計は、想定外の事態が起こった際にリスクが高まる

複雑な設計は、相続の発生で絡まります。
例えば、生前の細かい財産管理方法、相続後の承継配分を複雑な配分にする、生前に動かす必要のない信託財産が含まれている、といった家族信託の設計です。

無限の可能性を秘めた家族信託。
複雑な設計は、想定外の事態が起こった際に税務上の問題や、信託終了時の不動産登記手続きがスムーズに進まないなどのリスクを高めます。

小さな努力で大きな成果を生む「家族信託の基本設計」

何事も、設計はとても重要です。
これからご紹介する横手家の家族信託の設計は、私がお手伝いした方の中でも同様のパターンが一番多く、小さな努力で大きな成果を生む形です。

横手家:家族信託の設計

横手家の場合は、

父が委託者(財産を託す人)、そして受益者(財産の利益を受け取る人)。
私が受託者(財産を管理する人)です。

父が亡くなった場合は、第二受益者の母が権利を引き継ぎ、
私が亡くなった場合は、第二受託者の姉が権利を引き継ぐため、家族信託が中断することなく、目的達成のため継続されます。

信託が終わるタイミングは、両親がふたりとも亡くなったときです。
帰属権利者である私と姉は、信託終了時に残った信託財産を受け取ります。

家族信託の締結が終わってから

両親の体調の変化に敏感になった

2016年に、都内の公証役場で無事に手続きが完了しました。
あれから8年経ち、父は83歳、母は80歳になりましたが、幸い認知症にはなっていません(2024年8月現在)。
しかし、この8年間に様々な変化を感じています。

ここ2年で、父は心臓の不整脈を起こして、緊急入院しました。
新型コロナウイルス感染症の影響もあり、判断能力が著しく低下する可能性もありました。

母は、電話や対面で会話をしている時に、耳が遠くなってきたな…と感じています。
難聴は認知症のリスクを高めることを知っているので、いつもドキッとします。

父は、もう私の家にはめったに来ることができないので、こちらから子どもたちを連れて実家に帰るようにしています。
これは、両親の体調、家の中や母の料理の味の変化を感じることができるからです。

将来の見通しがついて、お金の話も気兼ねなくできるようになった

家族信託の価値は、他のご家族も同じで、「将来の見通しがつくこと」です。
そして、家族信託の前後で、親とお金の話がしやすくなったことで、その後もお墓のこと、介護のこと、病気のことなど、様々なことを話せるようになりました。

子どもは、大人になれば親元から離れていきます。
物理的に離れるだけでなく、心まで離れていく親子、兄弟も残念ながら少なくありません。
我が家の場合、家族信託によって家族の絆が深まりました

家族信託の本当の価値は「心の安心感を長期にわたって得られること」

家族信託は、手続きや契約の締結がゴールではありません。
その後にある、「親も子も、将来何が起きても対応できる・慌てなくていい」そんな心の安心感を長期にわたって得ることができるのが、家族信託の本当の価値だと感じています。

決して100点満点の手続きではありませんが、家族信託をしなかった場合のリスクを考えれば、十分合格点の取れる手続きだと思います。

まずは、認知症とお金の問題を知ってください。
家族信託をしないという選択も、もちろんあります。
親もあなたも、想定外のことが起きても、安心して暮らせる。

選択肢を広げることが重要です。
親御さんとご家族が達成したいことだけに絞って、家族信託の運用や相続が発生したときの手続きも最小限の労力ですむような、シンプルな設計をご提案いたします。

まずは、一歩前に進むことからです。私も最初は、小さな一歩から始めました。
一緒に伴走しますので、安心してください。

不透明な介護・相続の問題が
解決するように、
あなたに寄り添いながら
シンプルでわかりやすい
家族信託を設計します。

お気軽にご相談ください。

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  • 親子それぞれ1回ずつ、計2回まで無料でご相談いただけます。
  • オンライン相談に加え、ご希望に応じて出張相談も承ります。
    (交通費は別途ご負担いただきます)