家族信託のデメリットや危険性

家族信託のデメリットや危険性

近年、「認知症対策」「相続対策」という言葉とともに、家族信託という制度が注目されるようになりました。インターネットやセミナーなどでは、「後見制度より自由」「裁判所の関与がない」「認知症になっても資産が止まらない」といったメリットが強調される場面も多く見受けられます。

確かに、家族信託は非常に有効な制度です。私、横手も家族信託コンサルタントとして、多くのご家庭の認知症とお金の問題に関わってきましたし、実際に家族信託がベストな解決策になるケースも数多くあります。

しかしその一方で、私は「家族信託は万能ではない」ということを、強くお伝えしたい立場でもあります。メリットばかりが先行し、デメリットや危険性が十分に理解されないまま導入されてしまうと、将来取り返しのつかない問題を引き起こす可能性があるからです。

今回は、家族信託の相談を日常的に受けている専門家として、あえて「家族信託のデメリットや危険性」について、率直にお話ししていきます。

家族信託は「お金の管理制度」であって「人生すべてを任せる制度」ではありません

まず最初に、家族信託について大前提として理解しておいていただきたいことがあります。それは、家族信託はあくまで「財産管理・運用・処分」に関する制度であり、本人の生活や医療、介護に関する判断を代理できる制度ではないという点です。

私、横手は相談の現場で、「家族信託をすれば、認知症になってもすべて家族が代わりにできるようになるのですよね?」と聞かれることがよくあります。しかし、これは大きな誤解です。

家族信託は、自分で財産を指定して家族などと信託契約を結ぶというもので、信託できる財産には制限があります。

家族信託では、施設への入所契約や入院手続き、介護サービスの利用契約といった、いわゆる身上監護に関する行為を代理することはできませんお金の管理はできても、生活全般の判断はできないのです。

この点を理解しないまま家族信託だけに頼ってしまうと、いざ認知症が進行したときに「お金は動かせるのに、契約ができない」という中途半端な状態に陥る危険性があります。

家族信託だけですべてカバーできるわけではない

家族信託は、認知症対策として非常に注目されている制度ですが、私、横手は「家族信託だけですべてをカバーできるわけではない」という点を、特に注意してお伝えしています。家族信託でできるのは、あくまで財産の管理や運用、処分に関することに限られます。たとえば、不動産の売却や預貯金の管理といったお金の面では大きな力を発揮しますが、本人の生活や医療、介護に関わる判断までを代行できる制度ではありません。

認知症が進行すると、施設入所の契約や入院・手術に関する説明への同意など、身上監護と呼ばれる領域の問題が必ず出てきます。しかし、家族信託にはこの身上監護権がなく、家族であっても法的な代理人として判断できない場面が生じます。その結果、「お金は動かせるのに、契約ができない」という状態に陥る危険性があります。

家族信託は万能な制度ではなく、後見制度や任意後見、遺言などと組み合わせて初めて安心につながるケースも少なくありません。この前提を理解せず、家族信託だけに期待してしまうこと自体が、大きなリスクになり得るのです。

私、横手は、家族信託コンサルタントを名乗っていますが、このように制度によってメリットデメリットがあるので、家族信託という部分だけでなく、将来を見通して必要な対策を、それぞれのご家族の状況に合わせて最適な解決策を一緒に探していきます。

専門家費用が高額になりやすいという現実

家族信託のデメリットとして、まず避けて通れないのが費用の問題です。私、横手自身も専門家の一人としてお話しする以上、これは正直にお伝えしなければなりません。

家族信託は、定型文で作成できるものではありません。家族構成、保有資産の内容、将来想定されるリスク、相続の考え方などを踏まえたオーダーメイドの契約が必要になります。その結果、契約書の作成費用や不動産の信託登記費用などがかさみ、後見制度などと比べて初期費用が高額になりやすい傾向があります。

特に、「認知症対策も相続対策も全部まとめて設計したい」となると、契約内容はさらに複雑になり、専門家報酬も上がることになります。ご家庭によっては、この費用負担が現実的でないケースもあります。

自分でやるという選択肢もありますが、親が認知症になる前に、あらゆるケースを想定して実際に落ち度なく運用できる状態を作ることは難しいです。

家族信託で信託できる財産には制限がある

家族信託は「財産を丸ごと任せられる制度」と思われがちですが、実際にはそうではありません。信託できるのは、あらかじめ信託契約で定めた財産に限られます

私、横手は相談の中で、「全部まとめて信託に入れておけば安心ですよね」と言われることがありますが、実務上はそう簡単ではありません。財産の種類や管理方法によっては、信託に向かないものもありますし、後から取得した財産が自動的に信託財産になるわけでもありません。

結果として、信託財産とそうでない財産が混在し、管理が煩雑になるケースも少なくありません。この点を理解せずに導入すると、「思ったほど便利ではなかった」と感じる原因になります。

家族信託の事例がまだ少ない

家族信託は、日本ではまだ比較的新しい制度です。私、横手が特に注意してほしいと感じているのは、この情報の少なさによる不確実性です。

家族信託は、契約を結んだ瞬間がゴールではありません。むしろ、認知症が進行したり、本人が亡くなったりした後に、本当の意味で制度が動き始めます。しかし、その段階でどのようなトラブルが起き得るのかについて、裁判例や実務事例が十分に蓄積されているとは言えません。

将来、家族関係が変化したり、想定外の相続争いが起きたりした場合に、信託契約が思わぬ形で足かせになる可能性も否定できません。この不確実性は、家族信託の大きなリスクの一つだと私は考えています。

まだ新しい制度で情報が少ないからこそ、実際の事例やケースを多く経験した専門家にご相談いただくことを推奨します。こちらの【専門家が2時間超で徹底解説】「認知症でも間に合う?」親の財産凍結、家族信託で解決!手続き・費用・失敗談の動画は、家族信託の全体を知るために役立つと思います。

自由度が高いからこそ「設計ミス」が致命傷になります

家族信託の魅力としてよく語られるのが、その自由度の高さです。しかし、私、横手はこの自由度の高さこそが、最大の危険性になり得ると感じています。

受益者連続型信託のように、将来の世代まで財産の流れを細かく決めることも可能ですが、人生は設計図どおりには進みません。想定外の相続人の死亡、家族関係の悪化、税制改正など、一つ歯車が狂うだけで、契約全体が機能しなくなる可能性があります。

「策を弄しすぎると、かえって身動きが取れなくなる」。これは、家族信託の相談を重ねる中で、私、横手が何度も感じてきた実感です。

身上監護も含め、家族信託と任意後見の組み合わせ

認知症への備えでは、財産管理と同時に「身上監護」をどう確保するかも重要な視点になります。

身上監護とは、医療や介護、施設入所、住まいに関する契約など、生活そのものに関わる意思決定を行う権限を指します。

家族信託は財産の管理や運用には非常に有効ですが、身上監護に関する法的な代理権までは持ちません。そこで有効になるのが任意後見制度です。判断能力があるうちに任意後見契約を結んでおくことで、将来、認知症が進行した場合でも、生活や医療に関する手続きを法的に支えることが可能になります。

代理人予約と生前贈与などの対策

認知症への備えとしては、家族信託だけでなく、代理人予約や生前贈与といった制度も、状況に応じて検討する価値があります。

代理人予約とは、判断能力があるうちに、将来の財産管理や契約手続きを任せる人を決めておく考え方で、医療・介護の場面で意思決定を円滑にする助けになります。また、生前贈与は相続対策として知られていますが、認知症になる前に計画的に進めることで、資産の凍結リスクを軽減する効果も期待できます。

私、横手は、これらの対策は単独で考えるのではなく、家族信託と組み合わせて設計することで、より実効性の高い認知症対策になると考えています。

私、横手が最も大切にしていること

最後に、私、横手が家族信託の相談を受ける際に、必ずお伝えしていることがあります。それは、「家族信託が最適解とは限らない」という前提に立つことです。

後見制度が向いている方もいれば、遺言書だけで十分な方もいます。場合によっては、家族信託と後見制度を併用した方がよいケースもあります。大切なのは、制度ありきではなく、「そのご家族にとって何が一番安心なのか」を軸に考えることです。

メリットだけでなく、デメリットや危険性もきちんと説明し、納得したうえで選択してもらう。それが、認知症とお金の専門家としての私、横手の責任だと考えています。

家族信託を検討されている方は、ぜひ一度立ち止まり、「本当に自分たちに合っているのか」を冷静に考えてみてください。その判断のお手伝いができることが、私の役割だと思っています。

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