認知症の人は何人に一人?厚生労働省の推計から考える

「認知症の人はどれくらいいるのだろう」と漠然と考えたことはありませんか?
私、横手は、家族信託や認知症対策を支援する中で、数字のインパクトが多くのご家庭の備えを促す鍵になると実感しています。
令和4年(2022年)時点の国の調査によれば、認知症やMCIを合わせると、高齢者の約3〜4人に1人が何らかの認知機能低下を抱えています。こうした実態を知ることは、ご自身や親の将来の「お金」「生活」「契約」の備えを考える、非常に重要な第一歩です。
この記事では、最新データをもとに「何人に一人の割合で認知症やMCIがいるのか?」を明らかにしながら、認知症とお金の問題を専門とする私・横手の視点で、将来に備えるための考え方をお伝えします。
この記事の筆者
認知症とお金の専門家・横手彰太。これまでに家族信託の締結サポートは累計350組以上、信託財産総額180億円超を担当してきました。
日本全国67ヶ所の公証役場での手続き実績があり、NHK「クローズアップ現代+」やAERA、プレジデント、日本経済新聞など多数メディアでも紹介されています。セミナー講師としても300回以上登壇し、一般のご家庭から税理士、不動産会社まで幅広い方々にお金と認知症対策について解説してきました。著書に『親が認知症になる前に知っておきたいお金の話』をはじめ計5冊があります。

親が認知症になると、財産管理や相続の問題が一気に複雑化します。
だからこそ、「備えるなら今」が大切です。親に認知症の症状がある場合はすぐに対策しないと後悔しますので無料相談をお申し込みください。家族信託を詳しく学びたい方は2時間以上の濃い内容で解説した特別YouTube動画もご案内していますので、ぜひ最後までご覧ください。
認知症とお金の問題は、本当に重要な問題です。
手遅れになる前に、しっかりと考えて行動しましょう。
認知症の人数と割合はどれくらいか?何人に一人?
厚生労働省が公表した「認知症及び軽度認知障害(MCI)の高齢者数と有病率の将来推計」によれば、2022年時点で65歳以上の高齢者の約12.3%にあたる443万人が認知症を発症していると推計されています。
あわせて、軽度認知障害(MCI)とされる高齢者は約558万人、割合にすると約15.5%と示されています。
つまり、認知症とMCIを合わせると約1,000万人規模になり、65歳以上の約3〜4人に1人が認知機能の低下を抱えているという計算になります。
こうした数字を知ると、多くの人が「自分の家庭も無関係ではない」と感じ始めます。実際、私、横手が日々相談に乗っているご家族の中でも、認知症に関する問題はいつか起きるかもしれないことではなく、誰の身にも起こりうる現実として受け止められ始めています。
認知症とMCIの将来推計を表で整理する
厚生労働省が示している推計値を、わかりやすく整理すると次のようになります。
| 年次 | 認知症の人数(推計) | MCIの人数(推計) | 認知症+MCIの割合 |
|---|---|---|---|
| 2020年 | 約443万人 | 約558万人 | 約27.8%(約3〜4人に1人) |
| 2030年 | 約520〜530万人前後 | 約600〜620万人前後 | 約32〜35%(約3人に1人に近づく) |
| 2040年 | 約600万人超 | 約650万人超 | 約35〜37%(3人に1人の時代へ) |
※人数は厚生労働省推計、割合は高齢者人口の将来推計に基づく概算。
2020年の段階で認知症とMCIを合わせるとすでに約27.8%、つまり高齢者の3〜4人に1人が認知機能の低下に関わる状態にあります。今後はさらに割合が高まり、2030年には3人に1人に近づき、2040年には完全に3人に1人の社会が到来すると予測されています。
「認知症の人は何人に一人?」の現実をどう捉えるか
2022年時点のデータを冷静に見ると、認知症の高齢者は8〜9人に1人の割合で存在します。
軽度認知障害(MCI)まで含めると3〜4人に1人の割合です。これは決して特殊な状態ではなく、家族の中に一人でもMCIや認知症の方がいても不思議ではないほど一般的なものになっています。
私、横手はこの点を相談者の方々にお伝えすることが多くあります。「認知症は特別な病気ではなく、極めて身近な現象です。だからこそ早く備えることが大切なのです」と。認知症の予防のための体操、サプリメント、脳トレなどが流行っていますが、それらの認知症予防に取り組むならば、同時に認知症になってしまった時の生活やお金の問題を同時進行で考えなければなりません。
こんなにもたくさんの人が認知症になっているにも関わらず、日本ではまだまだ認知症の医学的な面ばかりからのアプローチしか浸透しておらず、認知症になったときの生活や契約、法的な面に対しての意識が全く広まっていないのが現状です。
認知症がご家族の中で起きたときの最大の問題は、病気そのものではなく、判断能力が失われることによって生活とお金が動かなくなることにあります。
認知症は「突然」生活とお金を止めてしまう
認知症が進行すると、本人が契約行為を行う能力が失われます。
老人ホームの入居契約、預金の引き出し、不動産の管理や売却、介護サービスの契約など、日常生活のあらゆる場面で本人の意思確認が必要になりますが、それができなくなるのです。
こうした状態を法的には「意思能力の喪失」と呼び、意思能力がないと判断された瞬間から、金融機関は本人名義の口座からの出金を拒否することがあります。これが、いわゆる口座凍結に近い状態を引き起こす原因です。
私、横手は現場で何度もこうした状況を見てきました。ご家族が「親の介護費用を払いたいだけなのに、銀行が動いてくれない」と困り果てる姿は珍しくありません。
認知症の推計値を見るだけでは、こうした生活実務上の問題は見えませんが、実際には数字以上に深刻な影響を及ぼしています。
認知症とMCIは「生活の設計を見直すタイミング」を教えてくれる
認知症が約443万人、MCIが約558万人という数字は衝撃的ですが、私はこの数字を恐れるためではなく備えの必要性を知るための指標として活用していただきたいと考えています。
認知症の増加は避けられません。であれば、判断能力がしっかりしている今のうちに、自分の財産、生活、介護の選択をどうしていくかを考えることが現実的な対策になります。
特に家族信託や任意後見制度などは、認知症に備える実務的な仕組みの中心となります。単なる医療や介護の準備ではなく、判断能力を失っても生活とお金が止まらない仕組みを作っておくことが、これからの高齢化社会では必須になります。
数字は「今すぐ話し合うべき理由」を教えてくれる
2022年時点で認知症の人は約443万人、MCIの人は約558万人。
高齢者の3〜4人に1人が認知機能低下を抱えていることになります。
これは遠い未来の話ではありません。
親世代だけでなく、自分自身の将来にも確実に関係してくるテーマです。
私、横手は認知症の数字を見るたびにこう感じます。
「認知症はもしもの問題ではなくいつか必ず向き合う問題である」と。
だからこそ、今のうちに家族で話し合い、財産の管理方法や生活の希望を共有し、必要に応じて信託や法的準備を整えることが重要になります。数字は不安を煽るものではなく、準備のきっかけとして最大限に活かすべきだと私は考えています。





