認知症と診断されてからの寿命(余命)は何年?

「認知症と診断されたら、あと何年くらい生きるのだろう」
親が認知症と診断されたとき、多くの人が真っ先に気にするのが余命です。しかし、私、横手が現場で繰り返し感じているのは、「余命を短く見積もりすぎてしまうことが、結果的に家族を苦しめている」という現実です。
実際には、認知症と診断されてからも長い期間生活が続くケースが多く、その間の生活費や介護費、お金の管理方法を考えておかないと、家族が立て替えを強いられたり、親族間のトラブルに発展することがあります。まずは、認知症と診断されてからの平均的な期間を、できるだけ公的データに基づいて整理していきます。
この記事の筆者
認知症とお金の専門家・横手彰太。これまでに家族信託の締結サポートは累計350組以上、信託財産総額180億円超を担当してきました。
日本全国67ヶ所の公証役場での手続き実績があり、NHK「クローズアップ現代+」やAERA、プレジデント、日本経済新聞など多数メディアでも紹介されています。セミナー講師としても300回以上登壇し、一般のご家庭から税理士、不動産会社まで幅広い方々にお金と認知症対策について解説してきました。著書に『親が認知症になる前に知っておきたいお金の話』をはじめ計5冊があります。

親が認知症になると、財産管理や相続の問題が一気に複雑化します。
だからこそ、「備えるなら今」が大切です。親に認知症の症状がある場合はすぐに対策しないと後悔しますので無料相談をお申し込みください。家族信託を詳しく学びたい方は2時間以上の濃い内容で解説した特別YouTube動画もご案内していますので、ぜひ最後までご覧ください。
認知症とお金の問題は、本当に重要な問題です。
手遅れになる前に、しっかりと考えて行動しましょう。
認知症と診断されてからの平均的な余命
認知症の余命については、「何年」と一律に言い切れるものではありませんが、厚生労働省や国立長寿医療研究センターなどの研究から、おおよその傾向は示されています。
厚生労働省が公表している「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」や、国立長寿医療研究センターの疫学研究によると、認知症と診断されてから亡くなるまでの期間は平均で8〜10年前後とされることが多くなっています。
これは診断時の年齢や基礎疾患、認知症の種類によって大きく差があり、比較的若い年齢で診断された場合や身体状態が良好な場合には、10年以上生活するケースも珍しくありません。
認知症の種類による余命の違い
認知症にはいくつかのタイプがあり、余命の傾向にも違いがあります。アルツハイマー型認知症は進行が比較的ゆっくりで、診断から10年以上生活する人も多い一方、レビー小体型認知症や脳血管性認知症では、身体合併症の影響を受けやすく、平均余命がやや短くなる傾向があるとされています。
ただし、どのタイプであっても「診断から数年で終わる」と考えるのは現実的ではなく、長期的な生活を前提に備える必要がある点は共通しています。
そう簡単に認知症になんてならないと思っている人も多いですが、認知症の人は何人に1人だと思いますか?
2022年時点で65歳以上の高齢者の約12.3%が認知症を発症しており、認知症とMCIを合わせると65歳以上の約3〜4人に1人が認知機能の低下を抱えているとのです。それゆえに、とても身近な問題なのです。
認知症予備軍(MCI)から考えた場合の期間
近年注目されているのが、認知症の一歩手前とされる「軽度認知障害(MCI)」です。
厚生労働省や日本老年医学会の資料によれば、MCIと診断された人のうち、年間で約10〜15%が認知症へ移行するとされています。一方で、生活習慣の改善や適切な支援によって健常レベルに戻る人も一定数存在します。
MCIの段階から認知症を発症し、そこからさらに8〜10年生活すると考えると、「認知機能に不安を感じ始めてから亡くなるまで」は10年以上、場合によっては15年以上に及ぶことになります。
私、横手が「備えはできるだけ早い方がいい」と強調する理由は、この期間の長さにあります。
データで見る「認知症=長生き」の現実
| 状態 | 目安となる期間 |
|---|---|
| MCI(軽度認知障害)から認知症発症まで | 数年〜10年程度 |
| 認知症診断後の平均余命 | 約8〜10年 |
| MCI段階から亡くなるまで | 10〜15年以上の場合も |
※ 出典:厚生労働省「認知症施策推進総合戦略」、国立長寿医療研究センター研究資料、日本老年医学会公表データ等のデータを用いて目安を作成
この表から分かる通り、認知症は「診断されたらすぐ終わる病気」ではありません。むしろ、診断後の生活のほうが長く、そこでのお金と財産の管理が家族の負担を大きく左右します。
認知症になってから起こりやすいお金の問題
私、横手が行っている相談の現場では、「親には十分な預金があるのに、認知症になった途端に使えなくなった」という声が後を絶ちません。銀行口座は本人確認ができなければ動かせず、不動産も本人の意思表示ができないと売却が難しくなります。
その結果、介護費用や生活費を子どもが一時的に立て替え、後から精算できないまま年月が過ぎるケースや、親のお金を使ったことで兄弟間の不信感が生まれるケースが起こります。余命が長いからこそ、この問題は一時的ではなく、何年も続いてしまうのです。
元気なうちに「お金と財産のルール」を残す意味
認知症が進んでからでは、できる対策は限られます。一方、元気なうちに家族信託などの契約を結んでおけば、状況は大きく変わります。
家族が親のためにお金を立て替えたり、仕事を辞めたりする必要がなくなり、財産の承継方法を事前に決めておくことで、相続時のトラブルも防ぎやすくなります。
横手彰太からみなさんに伝えたいこと
「認知症の問題は、医療よりも先にお金の動きを止めない状態をどう作るかが重要になる」ということを知ってもらいたいです。
余命が長いからこそ、途中で制度に縛られたり、家族が疲弊したりしない仕組みが必要です。
認知症と診断されてから慌てて考えるのではなく、認知症予備軍の段階、あるいはまだ元気なうちに、家族みんなが納得できる形でルールを決めておくことが、結果的に親本人の安心につながります。
まとめ
認知症と診断されてからの余命は平均で8〜10年、MCIの段階から考えれば10年以上に及ぶことも珍しくありません。
この長い期間をどう過ごすかは、お金と財産の管理次第で大きく変わります。
親が元気なうちに、家族信託などを活用して「誰が」「どの財産を」「どの目的で使うのか」を決めておくことは、長生き時代の新しい家族の備えと言えるでしょう。




