任意後見人になれる人は家族?成年後見人の違い

任意後見人になれる人は家族?成年後見人の違い

認知症対策を考える中で、「任意後見」と「成年後見」という言葉を耳にしたことがある方は多いのではないでしょうか。特に最近は、「任意後見人には家族がなれるのか」「成年後見人とは何が違うのか」といった質問を、私、横手は多くのご相談者から受けています。

インターネット上では、「後見人=家族がなるもの」「後見制度は怖い」「財産を自由に使えなくなる」といった断片的な情報も多く、正確な理解が難しくなっているのが実情です。認知症とお金・資産の問題を専門に扱う立場として、今回は任意後見人と成年後見人の違いを、できるだけわかりやすく整理してお伝えしたいと思います。

任意後見人とは?

任意後見人とは、将来、認知症などにより判断能力が低下した場合に備えて、本人が元気なうちに自ら選んだ人のことを指します。任意後見の最大の特徴は、後見人を誰にするか、どこまでの支援を任せるかを、本人の意思で決められる点にあります。

任意後見人には、家族や親族はもちろん、信頼できる第三者や専門家を選ぶことも可能です。ただし、任意後見契約は口約束では成立せず、公証役場で公正証書として契約を結ぶ必要があります。これは、本人の判断能力が十分にある時点での真意を明確にし、後々のトラブルを防ぐためです。

なお、任意後見契約を結んだからといって、すぐに後見が始まるわけではありません。実際に後見が開始されるのは、認知症などにより判断能力が低下し、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した後です。このように、任意後見人とは、将来に備えてあらかじめ信頼できる人に支援を託すための重要な役割を担う存在なのです。

そもそも後見制度とは何のための制度なのか

まず大前提として理解していただきたいのは、後見制度は「本人を縛るための制度」ではなく、「本人の権利と財産を守るための制度」だという点です。

認知症や精神障害などにより判断能力が低下すると、契約内容を理解できないまま不利な契約を結んでしまったり、悪質な業者に狙われたりするリスクが高まります。後見制度は、そうした事態を防ぐために、本人の代わりに法律行為を行い、財産管理や生活の支援を行う仕組みです。

ただし、この後見制度には大きく分けて「任意後見」と「法定後見(成年後見)」という二つの種類があり、その性質は大きく異なります。

任意後見人と成年後見人(法定後見)の違い

項目任意後見人成年後見人(法定後見)
制度を利用する時期本人に十分な判断能力があるうちすでに判断能力が低下した後
後見人を選ぶ人本人が自分で選ぶ家庭裁判所が選任
家族がなれるか家族・親族も可能家族が選ばれない場合も多い
契約・手続き公正証書による任意後見契約が必要家庭裁判所への申立てが必要
後見開始のタイミング判断能力低下後、裁判所が監督人を選任して開始裁判所の審判で直ちに開始
家庭裁判所の関与開始後は任意後見監督人を通じて関与強く関与し、定期的な報告義務あり
財産管理の自由度契約内容に沿って比較的柔軟厳格で自由度は低い
身上監護(生活・医療の支援)契約内容の範囲で可能法律上の身上監護権あり
本人の意思の反映反映されやすい反映されにくい場合がある
向いているケース早めに備えたい人、信頼できる人がいる場合すでに認知症が進行している場合

任意後見人になれる人は家族なのか

結論から言えば、任意後見人には家族がなることができます。相談を受ける中でも、「子どもを任意後見人にしたい」「配偶者に任せたい」という希望は非常に多いです。

任意後見制度の最大の特徴は、本人がまだ判断能力を十分に保っているうちに、「将来、認知症になったときはこの人に後見を任せる」と、自分で後見人を選べる点にあります。血縁関係の有無は問われず、信頼できる家族であれば問題ありませんし、場合によっては友人や専門家を選ぶことも可能です。

ここで重要なのは、任意後見契約は公正証書で結ぶ必要があるという点です。本人の意思がはっきりしていることを公的に証明するため、必ず公証役場で契約を結びます。これにより、「本当に本人が望んでいたのか」という後々のトラブルを防ぐ役割も果たしています。

成年後見人は「家族が選ばれる」とは限らない

一方で、成年後見制度、いわゆる法定後見では事情が大きく異なります。法定後見は、すでに認知症が進行し、本人の判断能力が低下した後に家庭裁判所へ申立てを行い、後見人を選任してもらう制度です。

この場合、後見人を選ぶのは本人や家族ではなく、家庭裁判所です。「当然、家族が後見人になるだろう」と思っていたのに、実際には司法書士や弁護士といった第三者の専門職が選ばれるケースが少なくありません。

裁判所は、家族間の利害関係や過去の金銭トラブル、本人との関係性などを総合的に判断します。その結果、「家族では中立性が保てない」と判断されれば、専門職後見人が選任されることになります。

任意後見と成年後見の決定的な違い

私、横手が特に強調したいのは、任意後見と成年後見では「主導権」がまったく異なるという点です。

任意後見は、本人が元気なうちに、自分の意思で後見人や支援内容を決める制度です。どこまで任せるのか、どのような支援を受けたいのかを、本人の価値観に沿って設計できます。一方、成年後見は、すでに判断能力が低下した後に始まる制度であり、本人の意思を十分に反映できないケースもあります。

また、成年後見では家庭裁判所の監督が入るため、財産の使い道についても厳しいチェックが行われます。これは本人を守るための仕組みですが、「自由にお金を使えなくなる」と感じる方が多いのも事実です。

家族が後見人になることのメリットとリスク

家族が後見人になることには、安心感や柔軟な対応ができるというメリットがあります。本人の性格や生活状況を理解している家族だからこそ、きめ細かな支援ができる場面も多いでしょう。

しかし、私、横手は同時にリスクについても必ずお伝えしています。

家族が後見人になると、「善意でやっているつもりでも、他の相続人から疑念を持たれる」「後から使途を問題にされる」といったトラブルが起こりやすくなります。特に相続を見据えた場面では、感情のもつれが法的な争いに発展することもあります。

認知症対策は「制度選び」ではなく「組み合わせ」が重要です

ここで強調したいのは、任意後見か成年後見か、どちらか一つを選べば安心という話ではないという点です。私、横手は、認知症対策は制度の「使い分け」や「組み合わせ」が重要だと考えています。

任意後見だけではカバーできない部分もあれば、家族信託や遺言を併用した方がよいケースもあります。大切なのは、ご本人の価値観、家族関係、資産状況を踏まえた上で、最適な仕組みを設計することです。

お伝えしたい結論

最後に、私、横手がこのテーマで最もお伝えしたいことをまとめます。任意後見人には家族がなることができますが、それが常にベストな選択とは限りません。一方、成年後見では家族が後見人になれない可能性もあり、制度の性質を正しく理解しておく必要があります。

認知症とお金の問題は、「まだ大丈夫」と思っている間に備えておくことが何より重要です。後見制度について正しい知識を持ち、必要に応じて専門家と一緒に考えていくことが、将来の安心につながります。

このコラムが、皆さまがご自身やご家族の将来を考えるきっかけになれば幸いです。

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