家族信託の費用相場はいくら?認知症から実家と貯金を守る「安心の初期投資」をプロが徹底解説
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「認知症になってからでは、親の銀行口座が凍結されて1円も下ろせなくなる」
このようなリスクを耳にして、親世代(70〜90代)のために家族信託の検討を始める40〜60代の方が増えています。
しかし、いざ調べようとすると、一番気になるのはやはり「お金」の話ではないでしょうか。ネットで検索しても「資産の〇%」や「複雑さによる」といった曖昧な表現ばかりで、「結局、我が家の場合はいくらかかるの?」と疑問に思われるはずです。
結論からお伝えすると、家族信託の費用は「実家の名義変更と、ある程度の老後資金の管理」を行う一般的なケースで、総額40万円〜80万円程度が標準的な相場となります。
「思ったより高いな」と感じられたかもしれません。しかし、この費用を正しく理解しないまま放置すると、将来その数十倍の「目に見えない大損失」を被るリスクがあります。
今回は、家族信託にかかる費用の「内訳の正体」と、それがなぜ必要なのかという「現実の理由」を、どこよりも分かりやすく、論理的に解説します。
この記事の筆者
認知症とお金の専門家・横手彰太。これまでに家族信託の締結サポートは累計350組以上、信託財産総額180億円超を担当してきました。
日本全国67ヶ所の公証役場での手続き実績があり、NHK「クローズアップ現代+」やAERA、プレジデント、日本経済新聞など多数メディアでも紹介されています。セミナー講師としても300回以上登壇し、一般のご家庭から税理士、不動産会社まで幅広い方々にお金と認知症対策について解説してきました。著書に『親が認知症になる前に知っておきたいお金の話』をはじめ計5冊があります。

親が認知症になると、財産管理や相続の問題が一気に複雑化します。
だからこそ、「備えるなら今」が大切です。親に認知症の症状がある場合はすぐに対策しないと後悔しますので無料相談をお申し込みください。家族信託を詳しく学びたい方は2時間以上の濃い内容で解説した特別YouTube動画もご案内していますので、ぜひ最後までご覧ください。
認知症とお金の問題は、本当に重要な問題です。
手遅れになる前に、しっかりと考えて行動しましょう。
1. 家族信託の費用相場はなぜ「総額40万〜80万円」になるのか?
【結論】費用は「作戦を練るプロへの報酬」と「国や公証人に支払う実費」の2つで構成される
家族信託をスタートさせるためにかかる費用は、大きく分けると「専門家へのコンサルティング報酬」と、「手続きにかかる法的な実費」の2つだけです。この2つの合計が、一般的に40万〜80万円の間に収まります。
【理由】家族ごとに異なる「オーダーメイドの法律文書」を作るから
なぜこれほどの手間とお金がかかるのでしょうか。それは、家族信託が「既製品の洋服」ではなく、あなたの家族の体型や好みに合わせて一から仕立てる「高級なオーダーメイドのスーツ」だからです。
100の家族があれば、100通りの家族関係、資産状況、そして「親の願い」があります。一箇所でもボタンの掛け違い(法律上の不備)があると、将来親の認知症が進んだときに「せっかく作った仕組みが動かない」という最悪の事態になりかねません。そのため、法律のプロが数ヶ月かけて安全な設計図を引く必要があり、その分の費用が発生します。
【具体例】プロの役割は「新幹線の運転士」と同じ
専門家の役割を、身近な乗り物で例えてみましょう。
| 項目 | 例え(メタファー) | 実際の役割・意味 |
| 専門家の役割 | 新幹線の運転士 | 家族の財産という重い車両を、認知症という嵐の中でも「口座凍結」という脱線事故を起こさずに、目的地(安心な老後)まで安全に送り届ける専門技術。 |
| 信託契約書 | 運行ダイヤ(時刻表) | 万が一、親が施設に入ったら実家はどうするのか、医療費はどこから出すのかという、将来のトラブルを予測した「事前の運行ルール」。 |
もし、運転免許を持たない一般の方が「なんとなく」で新幹線を運転したら、大事故につながりますよね。家族信託のコンサルティング費用とは、大切な家族の未来を無事故で送り届けるための「安全運行への対価」なのです。
【まとめ】
総額の数字だけを見ると一見高額に思えますが、その内訳は「法律上の安全」を担保するための必要不可欠なコストです。この初期投資を惜しまないことが、将来の大きな安心へとつながります。
2. 費用の内訳を完全解剖:何にいくらかかるのか?
では、具体的に「何に」「いくら」支払うのか、その詳細な内訳を論理的に分解して見ていきましょう。
① 専門家(コンサルタント・司法書士等)への報酬:30万〜50万円〜
これが費用の大半を占める「設計図の作成費用」です。
多くの専門家は、「管理を託す財産の総額(信託財産の価格)の0.5%〜1%」という変動制の料金体系をとっています。
- 実家(2000万円)と預貯金(1000万円)の計3000万円を管理する場合:最低報酬設定(30万円〜)が適用されることが多く、概ね30万〜40万円程度が相場となります。
この費用には、親御さんの本心のヒアリング、親族間のトラブル防止の調整、契約書の原案作成、そして後述する公証役場や法務局とのすべての事前交渉が含まれます。
② 公証役場に支払う費用(公正証書作成費用):3万〜5万円程度
家族信託の契約書は、必ず「公正証書」という、国が認めた最も証拠力の高い確実な書類の形で作成します。
これは、いわば「実家の金庫に頑丈な鍵をかけるための、鍵職人への手数料」のようなものです。親御さんの意識がしっかりしているうちに、本人の意思でこの契約を結んだという「公的な証明」を残すために、法律上どうしても削ることができない国の手数料です。財産の額に応じて、一律の基準で支払う金額が決まっています。
③ 法務局に支払う税金(登録免許税)と登記費用:10万〜15万円程度
信託する財産の中に「実家(不動産)」が含まれている場合、実家の名義を「親」から「財産を管理する人(お子さん)」へと書き換える手続き(登記)が必要です。
- 登録免許税(税金): 固定資産税評価額の「0.4%」(土地は0.3%)と法律で決まっています。
- 司法書士への登記代行報酬: 名義変更の手続きを代行してもらう費用として、5万〜8万円程度がかかります。
この名義変更は、実家を「お子さんの個人のもの」にするわけではありません。不動産の登記簿謄本(身分証明書)に、「この実家は、親のために子供が責任を持って管理している大切な財産ですよ」という『防護服』を着せるための手続きです。これにより、親の認知症が進行した後でも、お子さんの判断だけで実家を売却したり、賃貸に出したりすることが法的に可能になります。
3. 自分でやればタダ?「手作り信託」が引き起こす致命的な大損失
【結論】「自分で手続きをして費用をケガる行為」は、絶対に避けるべきです。
ネットの情報を頼りに、本屋で買った文例を見ながら自分で契約書を作ろうとする方がいらっしゃいますが、これはプロの視点から言えば、極めて危険なギャンブルです。
【理由】銀行や法務局は、1文字のミスも許してくれないから
家族信託は、契約書を作って終わりではありません。その契約書を持って、銀行に「信託口口座(しんたくぐちこうざ)」という専用の口座を作ってもらい、実家の名義を書き換えて初めてスタートします。
銀行や法務局の審査は、信じられないほど冷徹で厳格です。一般の方が作った契約書に、法律上の不備や、将来の矛盾がたった一行でも含まれていると、「この書類では口座は作れません」「名義変更は受け付けられません」と、窓口で一発でハネられます。
さらに最悪なのは、ハネられたときにはすでに親の認知症が進行しており、契約書の「作り直し」が二度とできなくなっているケースです。これでは、せっかくの手間が無駄になるどころか、完全に手遅れになってしまいます。
【具体例】手作り信託は「無免許での盲腸の手術」と同じ
お金を節約したいからといって、自分の大切な家族が盲腸になったとき、医療の本を片手に自分でメスを握る人は誰もいませんよね。必ず、お金を払ってでもプロの外科医に手術を依頼するはずです。
家族信託の設計もまったく同じです。
| 比較項目 | 自分でやる(手作り) | プロに依頼する |
| 難易度の例え | 自宅の裏山をコンパスなしで登る | 熟練のシェルパ(登山ガイド)と登る |
| ミスの代償 | 口座凍結(介護費用の自腹発生) | 完全な合法化(親の財産で親を介護) |
| 手続きのやり直し | 認知症が進むと不可能 | 事前チェックにより一発で成功 |
法律の知識がないまま手探りで行う手続きは、家族の財産を危険にさらす行為そのものです。
【まとめ】
目先の数十万円の報酬を惜しんだ結果、将来「親の口座が凍結され、毎月20万円の施設費用を子供世代がすべて自腹で仕送りし続けなければならなくなった」というご家族を、私は何人も見てきました。プロに支払う費用は、このような「将来の予測可能な大失敗」を未然に防ぐための、最も賢明な必要経費なのです。
4. 費用を「コスト(出費)」ではなく「将来の保険」と捉える視点
【結論】家族信託の費用は、失うはずだった財産を守るための「ディフェンスの投資」です。
多くの人は、家族信託の費用を「ただの痛い出費(コスト)」と捉えがちです。しかし、本質は違います。これは、将来発生するはずの「介護破産のリスク」を完全に相殺するための、極めて合理的な「保険」です。
【理由】対策を怠った場合の「成年後見制度」は、生涯で数百万円を失い続けるから
もし、事前の準備(家族信託)をしないまま親が認知症になり、銀行口座が完全に固まってしまったらどうなるでしょうか。実家を売ることも、定期預金を解約することもできなくなります。
その frozen(凍結)された状態を解除するためには、国が定めた「成年後見制度(せいねんこうけんせいど)」という手続きを家庭裁判所に申し立てるしか道はありません。
そして、ここからが本当の「現実の厳しさ」です。成年後見制度が始まると、多くの場合、裁判所が選んだ見ず知らずの専門家(弁護士や司法書士)が親の財産の「管理人」として就任します。
この外部の管理人に対して、親が亡くなるまでの間、毎月2万〜6万円という「後見人報酬」が、親の財産から永久に自動引き落としされ続けます。
【具体例】「一回限りのチケット」か「終わりのないサブスク」か
この違いを、現代の私たちがよく知るサービスに例えてみましょう。
- 家族信託の費用(プロへの依頼):最初に50万円を支払う「一回限りの買い切りチケット」です。その後、親が何年長生きしても、子供が自分で財産を管理するため、月々のランニングコストは「0円」です。
- 成年後見制度の費用(放置した結果):毎月4万円を支払い続ける、解約不可能な「人生終わりのないサブスクリプション(月額課金)」です。
もし、75歳の親が95歳までの20年間、認知症の状態で長生きされた場合、月4万円のサブスク費用は、総額で「960万円」という莫大な金額になって親の財産を削り取っていきます。しかも、そのお金は家族のためではなく、見ず知らずの管理人の報酬消えていくのです。
【20年間で見込める費用の圧倒的な差】
● 家族信託(事前に準備)
初期費用:約 500,000 円(一回のみ)
月額費用: 0 円
20年総額: 500,000 円
● 成年後見(放置して凍結)
初期費用:約 200,000 円(申立費用等)
月額費用: 40,000 円(毎月ずっと)
20年総額:9,800,000 円
この2つの数字を論理的に比較したとき、どちらが家族にとって本当に賢い選択であるかは、説明するまでもありません。
【まとめ】
事前の家族信託にかける40万〜80万円という費用は、将来の「1000万円近い不本意な出費」を未然にシャットアウトするための、最も費用対効果の高いディフェンスの防具なのです。
5. まとめ:プロが提案する「失敗しないための最初のステップ」
家族信託の費用相場について、その正体を包み隠さずお伝えしてきました。
- 一般的な実家と預貯金の管理であれば、総額40万〜80万円が標準的な相場であること。
- その費用は、家族ごとに異なるリスクを排除する「オーダーメイドの安全設計図」への対価であること。
- 自分でやるリスクは極めて高く、放置して口座が凍結された場合は将来その数十倍のコスト(成年後見人の月額報酬)を失う現実に直面すること。
親世代(70〜90代)が元気なうちは、「わざわざ大金を払ってまで、今やらなくてもいいのではないか」と考えてしまいがちです。しかし、認知症という心の病は、ある日突然、音を立てずに家族の日常に忍び寄ってきます。
「あのとき、少しのお金と手間を惜しまなければよかった」と、病院や銀行の窓口で後悔しても、時計の針を戻すことはできません。
家族信託の本質は、財産の防衛だけではありません。親御さんが人生の最後まで自分らしく豊かな医療や介護を受け、子供世代がその介護費用の負担で共倒れにならないための、「家族全員の笑顔を守る仕組み」です。
大切なお金の話だからこそ、まずは一度、信頼できるプロに現状の家族の状況を相談し、我が家専用の見積もり(設計図の概算)を取ることから始めてみてください。
早めの準備が、家族の絆を守ります。
